会社員のFX・暗号資産の税金|「20万円以下は申告不要」の本当の意味と住民税

FXや暗号資産で少し利益が出た年の年末、たいてい頭に浮かぶのは二つの疑問です。確定申告はしなきゃいけないのか。それと、会社に何か影響はあるのか。
「20万円以下なら申告しなくていい」という話は、たぶん一度は聞いたことがあると思います。半分は正しいのですが、残りの半分に住民税の話が抜け落ちています。この記事では、国税庁のタックスアンサーと自治体の案内をもとに、会社員が最低限おさえておきたいところを順に書いていきます。
利益が20万円以下なら、何もしなくていいんですよね?
一般的な制度の説明です。ご自身のケースでの判断は、税務署か税理士に相談してください。内容は、令和8年(2026年)10月時点で確認した公表資料にもとづいています。
FXの利益は、給与とは別に計算する
国税庁のタックスアンサーNo.1521によると、国内の登録業者(第一種金融商品取引業者・登録金融機関)を相手にした店頭FXや、取引所FXの差金等決済で出た利益は、「先物取引に係る雑所得等」として、ほかの所得と分けて課税されます。申告分離課税と呼ばれる方式です。
税率は所得税15%と地方税5%。これに加えて、平成25年から令和29年までの各年分は、所得税額の2.1%の復興特別所得税もあわせて納めます。No.1521にはもう一つ、令和9年(2027年)1月1日以後に生じる所得について、復興特別所得税の税率が1.1%に下がり、新たに防衛特別所得税(1%相当)が課される旨も書かれています。
給与と合算しないので、年収がいくらでも、FXの利益にかかる税率は同じです。ここが、あとで出てくる暗号資産との大きな違いになります。
ざっくりした金額のイメージも置いておきます。2026年分にFXで30万円の利益が出た場合、所得税が15%で45,000円、復興特別所得税がその2.1%で945円、住民税が5%で15,000円。合計で約6万1千円です。実際の申告では端数処理などがあるので、あくまで目安として見てください。
損失を出した年こそ、申告が要る
FXの損失は、ほかの「先物取引に係る雑所得等」とは通算できますが、給与所得などほかの所得とは通算できません。通算しきれなかった損失は、一定の条件のもとで翌年以後3年間繰り越して、将来の利益から差し引くことができます(No.1521、No.1523)。
その「一定の条件」が大事です。No.1523によると、損失が出た年分について所定の付表と計算明細書をつけて確定申告書を出し、その後も連続して確定申告書を出し、控除を受ける年分にも付表と計算明細書をつける必要があります。
言い換えると、負けた年に「利益がないから申告はいらない」と放っておくと、翌年に取り返したときにその損失を差し引けません。損をした年ほど確定申告をしておく価値がある、というのは少し直感に反しますが、覚えておいて損はないところです。
海外の無登録業者だと、扱いが変わる
No.1521では、市場デリバティブ取引にも、登録業者などを相手にした店頭デリバティブ取引にも当たらない取引の利益は、一般的には雑所得として総合課税になるとされています。税率は所得に応じた累進税率で、国内の登録業者でのFXとは損益の通算もできません。
暗号資産の利益は、いまのところ給与と合算
国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和7年12月)」では、暗号資産を売ったり使ったりして生じた利益は、事業所得などの基因となる行為に付随して生じる場合を除いて、原則として雑所得とされています。こちらは給与などと合算して税率が決まる総合課税です。
一方で、国税庁の「令和8年度 譲渡所得・山林所得関係の主な改正のあらまし」には、一定の暗号資産を暗号資産取引業者を通じて譲渡した場合に、20%(所得税15%、個人住民税5%)の申告分離課税とする特例の創設が載っています。適用は、金融商品取引法・資金決済法の改正法の施行日が属する年の翌年1月1日以後。施行の時期は、最新の発表で確認してください。
「20万円ルール」の正体
国税庁のタックスアンサーNo.1900では、給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象になっている会社員の場合、給与所得と退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると確定申告が必要とされています。
ポイントは二つあります。判定に使うのは取引した金額ではなく、所得金額、つまり利益のほうだということ。そして、FXの利益、暗号資産の利益、副業の所得などを全部合計して判定するということです。FXで12万円、暗号資産で10万円の利益なら、合計22万円で20万円を超えます。「それぞれ20万円以下だから大丈夫」とはなりません。
No.1900には、20万円とは別の基準で確定申告が必要になる人も挙がっています。給与の年間収入が2,000万円を超える人や、給与を2か所以上から受けていて一定の条件に当てはまる人などです。副業で給与をもらっているなら、自分がどこに当てはまるのか一度見ておいてください。
20万円以下でも、住民税の申告は必要
さて、最初に書いた「残りの半分」です。
名古屋市の案内では、所得税には給与以外の所得が20万円以下なら確定申告をしなくてよい場合がある一方で、市民税・県民税(住民税)にはそうした申告不要の範囲がなく、原則としてすべての所得を申告する必要があると説明されています。
つまり、FXの利益が20万円以下で所得税の確定申告が不要な人でも、お住まいの市区町村への住民税の申告は必要になります。逆に、所得税の確定申告をした場合は、あらためて住民税の申告をする必要はありません(名古屋市)。提出の方法や窓口は自治体ごとに違うので、お住まいの市区町村のウェブサイトで確かめてください。
会社のことが気になるなら
申告した所得は、住民税の計算にも反映されます。確定申告書には、給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税の徴収方法を選ぶ欄がありますが、申告分離課税の所得の扱いも含めて、実際の徴収方法は自治体によって違うことがあります。
それよりも先に確認しておきたいのが、勤務先の就業規則です。株式やFXのような個人の資産運用は副業とは区別されることが一般的ですが、会社によって規定は違います。税金の手続きはきちんと済ませて、社内のルールは事前に確かめておく。結局それがいちばん気楽です。
口座開設の流れはFX口座の開き方に、暗号資産の口座を作る前の確認事項は暗号資産の口座を作る前ににまとめています。
出典・参考にした資料
- 国税庁 タックスアンサー No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係
- 国税庁 タックスアンサー No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
- 国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 名古屋市「給与所得者で副収入がある場合、市民税・県民税の申告は?」
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和7年12月)」
- 国税庁「令和8年度 譲渡所得・山林所得関係の主な改正のあらまし」(PDF)
制度や税制は改正されることがあります。手続きの前に、出典元で最新の情報を確認してください。


